がんばりたくない日々

楽しいことと考えることと趣味と

風鈴の音とともに

けたたましいセミの鳴き声に風情を感じる夏の日。雲一つなく晴れた昼下がり。汗が止まらない。

暑さに耐えかねた私は、仕方なく扇風機の威力を強めることにした。電気代だって馬鹿にならないが、ここまで暑ければいたしかたない。貧乏作家の私の家には冷たい風を送り出してくれる頼もしいヤツなどいるはずもなく、型落ちのコイツでしのぐ毎日だが、六畳一間には十分だろう。

ボタンを押そうと立ち上がると、全身からぶわっと汗が出るのを感じる。ええいうっとおしい。しかしこの不快感も少しはマシになるだろう。

カチッと言う安っぽい操作音の後、風鈴の音とともに一陣の風が顔を撫でた。その刹那、視界は白で埋め尽くされた。反応する気力もない私は呆然と立ち尽くす。風に舞い上げられた原稿用紙は部屋を一通り駆け回った後、軽やかに畳の上に着地した。

一面に積もった白を辟易しながら見下ろす。これをまとめなおすのはなかなか骨が折れることだろう。しかし私は運が良い。なにせ順番を気にする必要はないのだ。

 

私はため息をひとつついた。